チク、タク、チク、タク…。
静かな部屋に響く、小さな金属の鼓動。ひんやりと滑らかな銀の蓋を指でなぞり、そっと開くと、そこには寸分違わず時を刻み続ける、精緻な世界が広がっている。秒針が滑らかに進む様は、まるで厳粛な儀式のよう。
【審美眼 -Aesthetic Eye- 】
この時計が刻んできたのは、単なる時刻ではないのかもしれない。大切な人との待ち合わせ、人生を左右する決断の瞬間、あるいは窓辺でただ静かに物思いに耽る時間。その一つ一つの瞬間の空気を吸い込んで、この小さな銀のケースの中に記憶として封じ込めてきた。蓋についた微かな傷は、きっと、どこかの誰かが大切に使い込んだ証。デジタル表示の無機質な数字とは違う、温かみのある物語がそこには流れている。
【 珠美 -Message- 】
時間は前にしか進まない、と誰もが言うけれど、この銀の時計を掌に乗せると、過去も未来も、この中で静かに息をしているような気持ちになる。私がまだ知らない、遠い昔の誰かの時間。その重みが、私という存在に、確かな輪郭を与えてくれる気がするから。この小さな鼓動は、私を過去と未来に繋いでくれる、大切な道標。

