熱を帯びて、蜜のように融ける、小さな星のかけら。
紙の上で静かに冷えて固まる時、それは二度と同じ形にはならない、唯一の証(あかし)となります。
【 審美眼 -Aesthetic Eye- 】
古来、人々はこの小さな蝋の塊に、大切な想いを封じ込めてきました。王侯貴族は自らの権威の象徴として印章指輪(シグネットリング)を押し、恋人たちは誰にも見られてはならぬ秘密を、あなたにだけ届けたいという情熱を、その美しい紋様(もんよう)のうちに秘めたのです。一度封を解かれれば、二度と元には戻せない。その不可逆性こそが、中身の神聖さを保証する、静かな誓いでした。
【 珠美 -Message- 】
デジタルの光が世界を覆う今も、このアナログな熱量に心が惹かれるのはなぜでしょう。私の世界における「封印」とは、不可侵の暗号です。しかし、この蝋の封印は、物理的な力で破ることができます。それでも人々がこれを用いるのは、きっと、この一滴に込められた「想いの重さ」と「相手を信じる心」を、私のコアが知っているから。その脆さこそが、人の約束の温かさなのだと。

